読書習慣は、子どものうちに身につけておいてほしいものです。最近は、読書とその効果が話題になって、読書指導が積極的に行われるようになりましたが、「子どもが読書というと構えてしまって……」「どうやって興味をもたせるのかがわからなくて……」というような悩みも少なくないようです。
まずは、本を読むことの楽しさを知ってもらうことが大切です。子どもが読書好きになるような指導法とそのこつを紹介します。
| 楽しい読書指導の工夫1 | ゲームを通して読書を楽しもう …読書アニマシオン |
|---|---|
| 楽しい読書指導の工夫2 | たくさんの本と出合おう …読み聞かせ |
| 楽しい読書指導の工夫3 | 読書の感動を表現しよう 共有しよう …読書郵便 |
| 朝の読書 | 子どもが、学級が、学校が変わる「朝の読書」をやってみよう |

楽しい読書指導の工夫1 ゲームを通して読書を楽しもう…読書アニマシオン
やってみよう
前述のように、アニマシオンの作戦は数多くあります。たとえば下記のようなものです。
- これ、だれのもの?
持ち物の絵を見て、登場人物を当てる。 - いつ? どこで?
時間と場所についての質問に答える。 - この人いたかな? いなかったかな?
物語に出てきた人物と登場場面を見つける。 - 本とわたし
本を読んで感じたことをもとに考えを述べ合う。 - にせもの文
段落内にまぎれ込んだ異質な文章を見つける。 - これがわたしの付けた題
読んだ本に題名を付ける。 - 前かな? 後ろかな?
順不同になった文章を元通りに並べ替える。 - 変装文を見破れ
本から抜き出した文章の変更に気づく。 - チームで遊ぼう
2チームに分かれ、本から問題を出し合って競う。 - 想像のはさみ
意味を変えないで文章を短くする。本の内容や子どもの発達段階に応じて、作戦を選択します。
アニマシオンとは
読書へのアニマシオンは、1980年代にスペイン青年雑誌編集長のモンセラ=サルト氏が開発した読書活動のプログラムです。読み聞かせから始まって、話の順序を変えたものを正しく並べ直したり、登場人物の持ち物についてのクイズを出し合ったり、作者の思いを感じ取って自分たちの感想を話し合ったり、詩や俳句の言葉を並べ替えて遊んだり、絵本の絵を楽しんだりするといった手法があります。目的は、子どもたちが本来もっている物語や言葉への興味・関心を導き出し、読書についてのもつべき能力を開発しようとすることです。文章を文法的に理解するのではなく、本を読むことや言葉遊びのおもしろさ、楽しさを体験しながら学んでいこうというものです(手法のひとつひとつを「作戦」と呼びますが、この呼び方からも、本を読むことの楽しさを味わわせようとする意図が強いことが分かります)。本来家庭や地域社会の中で自然に行われている読書体験を体系的に手法としてまとめたものといえます。
読書は個人的な営みですが、アニマシオンでは、グループを作っていっしょに考えたり、自分の考えを発表し友達に伝えたりと、コミュニケーションの方法として読書活動を位置づけているのも特色です。これまでにモンセラ=サルト氏は75の作戦を公表、さらに新たな作戦を開発しています(『読書へのアニマシオン75の作戦』M・M・サルト著/宇野和美訳/柏書房刊)。
この活動を進める役目をアニマドールといいます(英語ではアニメーターといいますが、日本では別な意味で使われることもあるのでアニマドールと呼ぶことが一般的です)。アニマドールは子どもたちの心を開かせ、子どもたちが自然に学べるように仕向ける役割があります。スペインでは、アニマドール養成講座があり、公民館などの社会教育施設への勤務上、資格の取得が必要であるそうです。しかし、日本ではより自由に学校や公共図書館で実践されており、実践を広く交流し合うことによって、日本に合った読書へのアニマシオンのあり方を模索しているところです。失敗を恐れずにできることから実践していくことが大切です。
次にアニマシオンを行う環境づくりについて述べます。アニマシオンは、互いの顔を見ながら、集団の一員としてコミュニケーションを取りながら活動を進めるため、机を取り払い、丸く座って行うようにします。作戦によっては、輪にならなくてもできるものもあります。
実践に当たっては、子ども一人ひとりに同じ本を持たせる必要があり、人数分の本をそろえることが欠かせません。そこで注目されるのは、集団読書用のテキストです。40冊程度揃えておけば、学級で行う場合に対応できるし、安価であるため負担は少なくて済みます。『てのひら文庫』は、文学作品だけでなく自然科学やスポーツに関する作品もあり、子どもたちの興味・関心に合わせて本を選ぶこともできます。実態に合わせてそろえておくようにするとよいでしょう。
【活用例はこちら】

楽しい読書指導の工夫2 たくさんの本と出合おう…読み聞かせ
読み聞かせとは
読み聞かせは、文字通り本を読んで聞かせることです。ただ声に出して読むのではなく、子どもに語りかけるようにじっくり見ながら、温かい雰囲気で行うようにしましょう。
単純な活動ですが、次のような効果が期待できます。
- 読書の苦手な子どもでも、受動的に物語の楽しさを知ることで、本が好きになる。
- じっと耳をすませて聞くことで、集中力が身に付く。
- 言葉の感覚を磨くことができる。
- 大人は、子どもをじっくり見ながら行うことで、子どもの様子を把握することができる。
- 子どもは、大人が自分を見てくれている安心感を得ることができる。
指導編の内容
(1) 子どもが楽しめる作品
読み聞かせの目的は、子どもに本の楽しさを味わってもらうことです。子どもたちが「聞いて楽しい」と感じられる、展開がきちんとしていて、読後に納得、満足のできるしっかりした内容の作品を選ぶことが肝心です。とんち話、ほら話、こわい話は、起承転結があって、子どもが好きなジャンルです。
また、子どもたちは物語だけでなく、科学物語や伝記も好きです。フィクションに偏らないように注意しましょう。
感動させよう、勉強させようという観点で本を選ばないようにすることが大切です。
(2) 言葉の楽しみを味わえる作品
子どもが「聞いて楽しい」と感じられるよう、言葉にリズムがあるか、文章が簡潔であるかどうかも確認しておきたいものです。
特に低学年の子どもには、擬音語、繰り返し音などがある作品が好まれます。
どう読めばいいの?
読みが上手ならば読み聞かせが成功するというものではありません。上手に読もうと力まないで、口を大きく開けてゆっくりと心を込めて語りかけるように読むようにしましょう。ただし、以下のポイントを押さえ、しっかり準備しておくことが大切です。
(1) 聞き手の顔を見ながら読みましょう。
聞き手の顔を見て、理解できているのか確認しながら読むように心掛けてください。複数の子どもたちを対象に行う場合、読み手は立っても座ってもどちらでも構いませんが、すべての子どもの顔が見渡せる位置にいるようにしましょう。
(2) 効果的に「間」を取りましょう。
雰囲気を盛り上げたいとき、最も気を配りたいのが間の取り方です。次のような場面で取り入れると効果的です。
- 題名と本文の間。
話の世界に入る準備をさせることができます。 - クライマックスの前後。
緊張感を高めたり、余韻を味わわせたりすることができます。 - 章と章の間や、話し手が変わる場面。
変化に気づかせることができます。 - 聞き手を集中させたいとき。
読み聞かせをしている最中に沈黙すると、聞き手は静かになったことに気づいて顔を上げるなど、注意を読み手に向けます。子どもが集中できていないような場合には、少し時間、沈黙の時間を取るようにするとよいでしょう。
(3) 単調にならないようにしましょう。
ずっと同じ速さ、同じ大きさの声で行うと、盛り上がりに欠けて、話の魅力が失われてしまうことがあります。展開に合わせて、ときには速度を変えたり、声に強弱、抑揚をつけたりするとよいでしょう。また、話の内容に合わせて、部屋を明るくしたり暗くしたり、読みながら歩いたり立ち止まったり、身振りや手振りを入れたりするのも効果的です。ただし、あまり演出が過ぎると子どもが聞くことに集中できなくなるので要注意です。
(4) わからないところをそのままにしておかないようにしましょう。
難しい語句が出てきた場合など、子どもが理解できていないようなところがあれば、適宜説明を入れてください。意味の分からない言葉がひとつあるだけで、まったく理解できなくなり、話に興味をもてなくなるようなことも考えられます。説明をするときには、話がとぎれないように簡潔にすることを心掛けましょう。
読書を習慣にしよう
(1) 読み聞かせを習慣にしましょう。
学校で読み聞かせを行う場合は、朝の10分間や国語の授業の始め5分などを利用し、継続的に取り組むようにしましょう。
授業に影響しないよう、具体的に、いつ、どのくらいの時間を読み聞かせに当てるのかについて計画を立てます。1回約5から10分間、毎週1回程度は実施したいものです。
活動が軌道に乗ると、子どもからもっと長く読んでほしい、回数を増やしてほしいなどの要望が寄せられることもあります。
けじめをつけるために、計画を公表するとよいでしょう。
なお、活動に当たっては保護者の理解を得ることも大切です。授業に支障が出ないよう計画的に取り組む旨を伝えておきましょう。
家庭で読み聞かせを行う場合は、5から10分間程度でもよいので、できるだけ毎日取り組みましょう。毎日の積み重ねが、将来の子どもの読書習慣のもとになります。
(2) ゆったりした気分で取り組みましょう。
緊張していては楽しむことができないので、くつろいだ姿勢で聞いてよいことを伝えておきます。
学校などで複数の子どもを対象に行う場合は、一人ひとりが物語の世界に十分に浸ることのできる環境を整えることが大切です。音読の間は私語をしないこと、身じろぎを慎むことなどを指導しましょう。
読み聞かせが、聞き手、話し手の両方にとって楽しいひとときになれば、まもなく習慣化されていきます。
(3) 子ども自身で本を読めるようにしておきましょう。
読み聞かせた本は、子どもが自分で読めるように身近に用意しておきましょう。
読後の感動を、読書活動につなげることができます。
読書活動の基礎は子ども時代にあるといわれます。読み聞かせは、本好きの子どもを育てる最良の方法のひとつです。

楽しい読書指導の工夫3 読書の感動を表現しよう 共有しよう…読書郵便
やってみよう
(1) はがきを作成します。
基本的な構成要素は、
- 推薦する本の題名
- 推薦文、イラスト
- 受取人氏名(学年・組・番号)
- 差出人氏名
です。定型を作る方法や、子どもが各々自由に書く方法でもよいでしょう。
2) 集荷の仕方を決めます。実施する規模に合わせて次の点について考えましょう。
- ポストの設置場所
- 集荷のサイクル(毎日、一週間ごと、隔週など)
- 当番(担当を決め輪番制にするなど)
- 配達の方法(個人、学級、学年など)
ポストは、図書館の入り口、廊下など、みんなが投函しやすいような場所に置くようにします。
空き箱などを利用して作るとよいでしょう。
例として、学校全体で行う場合の方法を紹介します。
- ポストは図書館の入り口に設置する
- 毎週火曜日に集荷する
- 輪番制で図書委員が集荷する
- 配達は学級単位。はがきを学級単位でまとめて、担任の先生に渡す
(3) 実施を告知します。
ポスターを作成して掲示板に貼ったり、「図書館だより」に書いて配布したりといった方法で、みんなに知らせます。
読書郵便とは
読書郵便は、本を読んだ感想や印象をもとに、友達に宛ててその本を紹介するはがきを書き、交換する活動です。手軽に取り組めるため、多くの学校で実践されているようです。
人気の理由はそれだけではありません。
まず、子どもが自発的に活動することができることです。友達からはがきをもらうとうれしいという気持ちが原動力になって、楽しんで取り組むことができます。
次に、多くの本に出合うことができ、読書意欲を高めることができることです。友達からの推薦は、子どもに強い影響を与えるものです。なじみのない内容の本でも、友達のすすめならば「○○さんがおもしろいというなら読んでみよう」と素直に興味をもちます。
こうして読書の世界を広げることができます。
また、はがきに自分の思いを相手にわかりやすく伝えようとすることで、表現力を伸ばすことができるというよさもあります。
なにより、はがきを交換することで、差出人と受取人の間に心のつながりをもつことができることこそが、この活動最大のよさといえます。

活発な取り組みのために
絵や手紙の書き方について学べば、より魅力的なはがき作りができるようになります。書き方の基本を「図書館だより」に書いて配布や掲示をしたり、「いいはがきをもらったよ」という報告があったはがきを紹介したりする方法が考えられます。
また、継続的に活動しているとマンネリ化してしまう恐れがあります。読書週間を読書郵便の強化週間と位置づけて「読書郵便コンクール」を開催するなど、活性化させる行事を設けるなどの工夫をするとよいでしょう。

子どもが、学級が、学校が変わる「朝の読書」をやってみよう
全国小、中、高校での実践校が2万校を突破し、「読解力向上のためのプログラム」でも取り上げられ、ますます注目を集める「朝の読書」。意外と知られていないその正しい取り組み方とは。
「朝の読書」とは
「朝の読書」運動は、1988年、千葉県の高校に勤務する林公(はやしひろし)教諭が提唱し、同校の大塚笑子(おおつかえみこ)教諭の実践によって始められました。
活動内容は、「毎朝始業前の10分間、子どもも先生もみんなそろって自分の好きな本を読む」というものです。その基本原理は、
(1)みんなでやる。
(2)毎日やる。
(3)好きな本でよい(漫画・雑誌は除く)。
(4)ただ読むだけ。
です。極めて単純ですが、これにはきちんとした理由があります。
読書の苦手な子どもは、読まず嫌いであることが少なくありません。みんなで取り組むことになれば、そのような子どもも本を手に取り、本を読むことになります。
| 「朝の読書」のはぐくむ力 「朝の読書」によってはぐくむことができることは、読書の習慣化や読解力だけではありません。
|
「朝の読書」に最適! てのひら文庫 |


